名古屋高等裁判所 昭和29年(う)97号 判決
弁護人は被告人は本件犯行直後自己の犯行を自首する意思の下に被害者の症状を診断の為来診した医師藤岡敏男に依頼し警察官に犯行を申告せしめたから自首減軽を為すべき案件である旨主張するから按ずるに前掲各証拠を綜合すると被告人は犯行後格別逃走するが如き意思はなく所論の医師藤岡敏男に最寄駐在所の巡査に犯罪の出来事を報告してくれる様依頼したが、自己は自ら出頭して捜査官に犯行を申告した事実はなく右医師も別段被告人に代つて自首する旨警察官に告知した事実がないことが明かであるが。もともと自首は自己の犯罪を捜査官に覚知せられる以前に犯人自身が進んで捜査の職権を有する者に犯行を申告することであつて、代理人による自首は法律上認め得られないものと解するを相当とするからこの主張も採用出来ない。
(裁判長裁判官 羽田秀雄 裁判官 小林登一 裁判官 栗田源蔵)